年が明けて今さらなに言ってんの、って感じだけど、それでもやっぱり書いときます。

 

11月24日の、台湾統一地方選挙と同時にいくつかの公民投票が行われたのはご存知のとおり。

 

そのなかで「2020年の東京オリンピックに現在の『チャイニーズ・タイペイ』ではなく『台湾』名義で参加することを求める」というのがあって、反対が約577万票、賛成が約476万票で否決されました。この項目が可決しなくて本当に良かったと思います。

 

もし「可決してしまった」と仮定した場合、百害あって一利なし。どういうことが起こるでしょうか。

 

1、台湾が名義変更の申請をIOCに対して行う(日本に対してではない。日本はあくまでも開催国だから、場所を提供してるだけ)。

 

2、中華人民共和国が激烈に反対する。中国がカネをばらまいてるアフリカとか南米諸国も揃って反対する。貧困国だろうが小国だろうが、IOC総会での一票は一票。

 

3、日本やアメリカも迷惑を被る。表立って賛成出来ない。

国際社会って正義とか理想なんか通用しないですよね。中国はずっと台湾を「中国の一部分」って主張してきました。

 

ちょっと小難しい話ですが、台湾の正式な国名は「中華民国」です。むかしは「どっちが正統な中国か?」なんてことで戦争までしてたわけです。

 

だから中華人民共和国からみれば、中華民国なんか認められないわけですよ。だって「自分たちこそが正統な中国」なわけですから。そのために日本とかアメリカに対しても「中国はひとつだけっていう前提でやっていくんやで。さもなきゃ、東アジアに面倒が増えるで」ということを押し付けてきたんです。

 

もちろん、台湾は実質的には独立してます。だからこそ、アメリカも日本も今のままでいて欲しいんですね。いわゆる「現状維持」です。台湾が中国の一部になっちゃうとそれはそれで困るので、実質的な独立状態を保ってる今の状態がずっと続いてくれればうれしいな、という態度です。

 

だから「台湾名義でいいじゃん」っていうのももちろんダメ。だって中国からしたら台湾は自国の一部分なんだから、「台湾」っていう名義で参加したら、それは台湾が独立していること、あるいは中国とは別の存在であることを認めることになっちゃうから。

 

「えー、でも香港は『香港』っていう名前で出てるじゃん」って気づいた方、するどいですね。でも香港は、中国の一部分っていう前提で出場してます。親分の許可済みだからOKなんですね。

 

複雑な話になっちゃいましたが、そんなわけで、日本もアメリカも台湾に賛成することは出来ません。だって中国の機嫌を損ねるから。今や世界経済第2位になった中国が機嫌を損ねると何をしでかすか分かりません。日本もアメリカも中国にだけ関わってるわけにはいきませんから、やっぱり今のままがいいんです。

 

「台湾のことを応援しないのか?!」って?応援したいですよ。でも日本もアメリカも自分たちの国益がいちばん。感情だけで応援はできません。仮に、本当に台湾がIOCに名義変更を申請することになっていたら、日米はこぞって水面下で台湾政府にブレーキをかけたでしょうね。あるいは「うちは賛成しないからね」と前もって通告したか。

 

4、今まで絶妙なバランスで台湾はオリンピックに出場してたのに、これからはそれさえ危うくなるかもよ、という状況を招く。

 

これも説明が必要ですね。

1979年IOC総会で、台湾は「チャイニーズ・タイペイ」という名前でオリンピックに出てもいいよ、ということになりました。なんでこの時期にそうなったかというと、1971年に台湾(中華民国)が国連を追い出されて、中華人民共和国が国連に加盟したからです。

 

前述したように「中国はひとつだけやで」という主張を「国際社会=国連」が認めたからです。だから今も台湾は国連に加盟していません。

 

国連を脱退した台湾(中華民国)ですが、国そのものが消滅したわけじゃありません。だから、オリンピックにも出場したいし、いろんな国際機関の会議にも出席したい。

 

そこでオリンピックの部分については、IOC総会で「じゃあこれからは『チャイニーズ・タイペイ』っていう名前なら出てもいいよ」と決まったわけです。

 

ただ、報道によると、この「チャイニーズ・タイペイ」を中国語にした場合、「中華台北」にするのか「中国台北」にするのかで揉めまくり、最終的には1989年にやっと「中華台北」にすることが、中国と台湾の間で合意されたということです。

 

まぁ、この中国語訳の部分はさておき、「チャイニーズ・タイペイ」という名称は、好意的に解釈すれば、IOC総会が「どうにかして台湾が出場できるように」と苦心の末に出した解決方法だったとも言えるわけです。

 

中国からすれば、中国の一部分である台湾が、自国チームとは別に出場することは猛反対です。さらには「中華民国」という名前も「台湾」も使えない。

 

じゃあどないしよ、どないしよ、という綱引きの結果が「チャイニーズ・タイペイ」なわけです。

 

「今まで絶妙なバランスで」オリンピックに出ていたのに、というのはこの点です。台湾側が強硬に「やっぱり台湾という名義じゃなきゃイヤだ」ということを主張すれば、中国どころか、IOC総会の加盟国までもが台湾に対して「じゃあもう出なくていいよ」と言い出すかもしれません。そうなったらどうしますか。

 

国際社会に正義も理想もないんです。「めんどくせえこと言うなら出るなよ」それが国際社会の本音です。自分たちの利益だとかカードになると思わない限り、台湾が支持されることはないでしょう。

 

結果として、たとえ妥協の産物であろうと、これまでは出場できていたのに、もはやオリンピックに参加することさえ出来なくなるという事態にもなりかねません。

 

さらにいえば、中国は台湾が「動き出した」と見て、オリンピックどころか、ありとあらゆる国際機関への参加を妨害してくるでしょう。悲しいかな、今の中国にはそれだけの発言力とそれを裏打ちするカネ(経済力)があるのです。

 

それは結果的に台湾の国際社会における生存空間を狭めるでしょう。そんな藪蛇なことをしないで、現状維持をしながらチャンスが訪れるのを待てばいいじゃないですか。今はそういう時期じゃなかったということです。

 

この公民投票を「応援しよう」と言っていた日本人はあまりにも理想主義でした。台湾の国民のほうが健全だったとはあんまり思えませんが、この点についてはとにかく否決されてよかった。台湾にとっても、日本にとっても、非常に良い結果になったと思います。

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